おけさかときわか
僕はあまり船酔いしないタイプだ
そして牛歩のごとく進みの遅いフェリーという乗り物に関しても、割りかし好きの部類に入ると言っていい。
毎月どこかしらの月曜日
仕事の関係で佐渡島へ出張することになっているのだが、会社の上司達はこれを嫌がる傾向にある。
理由は簡単で上司達は船酔いしやすい体質のため、あまり船酔いしない僕にお鉢が回ってくるのだ。
佐渡島への出張の日は夜中の3時半に起床する。ほぼほぼ眠りも浅いままなんとか起床して家族も寝ている中いそいそと準備し出発。
4時半ごろにコンビニか吉野家くんだりで朝ご飯を食べ、5時には船室で良い場所をゲットするために待機列の先頭にキャリーカートを置く。
ここまでがルーティンだ。
フェリーの二等船室というのは広い絨毯のスペースに各々のモラルでもって場所を作っていくシステムになっているので、運がよければ快適、運が悪ければ甚だ不快。これはもはやギャンブルに近い。
上手くいけばコンセントがあるポジションを獲得できるが、上手くいかないことも考えられるのでモバイルバッテリーも持っていく。
佐渡島へ行き来するフェリーには2種類ある
ときわ丸
と
おけさ丸
ときわ丸は新しく、席の配分も素晴らしく場所取りもしやすい。
おけさ丸は古く、席のヘリが斜めだったり謎の作りなのでデッドスペースができやすく、無能な乗客が場所取りすると無駄が多く全然綺麗に埋まらない
僕はいつもこの
ときわ か おけさ か
のギャンブルに立ち向かわねばいけないのだ。
ここで1番腹が立つのが高齢な乗客だ。
特有の「パーソナルスペース侵害」という技で僕を苦しめてくる。
僕は1人で屋外で行動する時、基本気が立っていることが多い。1人で行動するのは好きだがかなりナイーヴなので、この1人で行動する環境に配慮の無さや集団で気が大きくなったことで侵害してくる者に、この世の憎悪の全てを込めたような面構えで嫌がってしまう。
これは音楽を作る上で歌詞にもよく登場するが、大学生などが陥りやすいサークル等の集団にいることで自分が何をやっても許されると勘違いしたような行動や、自分勝手を拗らせた老人、スーパーで距離を詰めてくるババアなど
僕は常に日常に潜むストレスに過敏で、ストレスを感じ安い。
しかしそんな中でも
本当になぜお年寄りはあんなにも僕が不快に感じる距離に陣取るのか?
そんなことを辛さのあまり呟いたところ
「君のこと好きなんじゃない?」
みたいなことをリプライしてきた人がいたが
僕は本気で嫌で呟いていたので無視した。
そしてこの席取りゲームで1番腹が立つのが
「コンセントポジションに陣取るのに、コンセントを使わない奴」
本当考えろよ
なんか書いてて腹立ってきたな
と、5時半の搭乗時間まで
このようなストレスを回避するために早めに陣取っているのだ。
つらつらとこのようなストレスについて書いたが、僕は基本片道2時間半かけて佐渡島を回り往復して帰るこの出張が好きだ。
普段の営業事務所に寄らず、
若干旅行気分で好きなスタンスで仕事できるというのもまた魅力だったりする。
なのにも関わらず、
「この出張は苦痛なものだ」
という社内認知のせいか、
「お疲れ様、大変だったね」
となぜか労っていただけるのだ。
僕は半分旅行気分とも言えず、いえいえと謙遜して見せるのだった。
旅行として佐渡島へ行ったことはないので
ちゃんと旅行もしてみたいが
また来年行くのを若干楽しみにしている。
ただ何度行っても
上記のストレスが消えることはないだろう
ただもし僕の心が広かったとして、
それが故に無い頓着からまた別の誰かにストレスを与えるのかもしれない。
そう考えると
ストレスを溜めながらでも、この性格でいたいと思った。
広い絨毯席に小さく蹲り、録音したラジオを聴きながら今日も社会を恨むのだった。